『帰ってきたヒトラー』を観て
昨日、デビッド・ベンド監督の映画『帰ってきたヒトラー』(2015年、ドイツ)をシネマ・パレットで観た。金曜日午後8時の上映で観客はぼくを含めて1桁台。
映画はすごかった。ドイツの政治状況にくわしいわけではないが、全編にわたってその徹底したパロディであることはわかった。もちろんそんな知識が無くとも、口の中が渇くような、苦い笑いがたっぷりできるように作品はつくられている。ドイツの政治状況がわかっているなら、笑いの連打はとまることがなかっただろう。
ぼくでも笑える場所は何ヶ所かあった。男性の副編集長が女性編集長を陥れるために、TVのコント作者たちに人種ネタのコントをつくらせるシーンなどは、宗教ネタの風刺画で有名な出版会社をパロディにしたものだろう。この男性副編集長は作戦が成功して見事に編集長になるが、TVの視聴率は低下の一途をたどる。彼の反ナチ思想はその事態ではじけ飛んで、落ち込んだ視聴率を上げるために再度ヒトラーを起用してしまう。
この笑いは、リベラルだという思い込みを笑っているのだ。ヒトラーを現代に甦らせるのは、保守系や右翼の人間たちであるよりも、自分をリベラルだと思い込んでいる人間たちなのだということをわからせる映画だった。
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/
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