不敵な面構えの遊女たち
喜多川歌麿画《北國五色墨 河岸》1794-95年頃、ボストン美術館蔵
江戸の新吉原遊郭はおはぐろどぶという大きなどぶに囲われていた。
遊女たちの逃亡を阻止するためだ。
格式高い新吉原のはずれ、おはぐろどぶの外側に張り付いて、
川岸見世とか切見世とか鉄砲見世とか呼ばれた格下の女郎屋が並んでいた。
川岸見世の遊女も鉄砲見世の遊女もたくましく描かれている。
中世まで遊女たちは皇室や貴族の屋敷にも出入りする聖なる存在だった。
江戸で蔑視される存在に落されたとしても、
近代とは異なり、まだ遊女たちには聖性が残されていた。
最底辺の格下の遊女たちを、
歌麿は惨めな存在としては描かなかった。
不敵な面構えで彼女たちは、世間を睨むのだ。
喜多川歌麿画《北國五色墨 てっぽう》1794-95年頃、シカゴ美術館蔵
関連記事