ゴッホによる補色の組み合わせ:ピアノを弾くガシェ嬢

具志堅 要

2022年11月21日 12:27


ゴッホの手紙「テオ宛第645信に添えられたスケッチ」。
ゴッホは「横に細長い麦の絵と対照したらたいへんよい」という。
「淡い緑と黄緑とで桃色の補色になる」からだという。
浮世絵や掛け軸などのジャポニスムの影響によるものだろうか。
組み合わせの効果のほどは、私にはわからない。
ただガシェ嬢の流れるようなバラ色のドレスの躍動感には惹き込まれるものがある。

昨日と一昨日とでガシエ嬢の肖像を描いたから、近いうち君に見せたい。ドレスはばら色、突き当りの壁は緑でオレンジ色の斑点がある。赤い絨毯にも緑の斑点があり、ピアノは濃い紫で、高さ一メートルに幅五十センチだ。
僕が愉快に描いた肖像画だが——なかなかむつかしかった。今度は小さなオルガンに向かった所をポーズさせようと約束してくれた。君のためにも一点描くとしよう——この絵は横に細長い麦の絵と対照したらたいへんよいと思う。それで一方の画布は縦に長い桃色で、もう一方のは淡い緑と黄緑とで桃色の補色になる。しかし、まだまだ人々が互いに引き合う絵や自然の断片の一つと他の一つの間に、不思議な関係のあることを理解するまでには前途遼遠だ。(硲伊之助訳『ゴッホの手紙 下』1970年、岩波文庫)



フィンセント・ファン・ゴッホ『ピアノを弾くマルグリット・ガシェ』 1890.6 (バーゼル市立美術館)


フィンセント・ファン・ゴッホ『オーヴェル近くの麦畑』 1890.6-7 (オーストリア絵画館)




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