ベッカーとリルケ、死後の友情
パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 『自画像』1906年
ドイツ表現主義の画家パウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876 - 1907)はこの絵を描いた翌年に31歳で亡くなっている。
女性のセルフヌードは当時、衝撃的だったという。
詩人のライナー・マリア・リルケ(1875 - 1926)とも恋愛に近いような親しい友人関係にあったようだ。
パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 『ライナー・マリア・リルケの肖像』1906年
リルケは彼女の死を悼んで「或女友達のために」という270行にわたる鎮魂歌(レクイエム)を書いている。
堀辰雄がその一部を訳している。
パウラは死後にリルケのもとを訪れたようだ。
詩人の微妙なる筆は、冒頭、若くして逝けるものが、生者のところに歸つてきて、何か忘れていつたものを搜し求めるかのやうに、おづおづとさまよひ歩いてゐる姿を描いてゐる。
長い人類史で幾度も繰り返されたように、リルケは死者の霊を死者の国に送る。
送ることによって、逆に死者は生きている者の心の中に生き続けることになるのだ。
歸つていらつしやるな。もしお前に我慢ができたら、死者と倶に
死んでいらつしやい。死者にはたんと仕事がある。
が、私に助力して下さい、それがお前の氣を散らさない範圍で、
遠方のものが屡〻私に助力してくれるやうに、私の裡で。
(引用は青空文庫、堀辰雄「鎮魂曲」より)
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