——無縁の縁(えにし)を紡ぐ——
貨幣においては、商品の一切の質的差異が消失するのであるが、同じように、貨幣の方でもまた、急進的平等主義者(レヴェラー)として、一切の差異を消滅させる 。(マルクス『資本論(一)』岩波文庫、230-231ページ)
「黄金?黄色い、ぎら/\する、貴重な黄金じゃないか?こいつが此のくらいありゃ黒も白に、醜も美に、邪も正に、賤も貴に、老も若に、怯も勇に変えることができる。え!神様たち!何と神官共(ども)だろうが、お傍仕(そばづか)えの御家来だろうが、みんな余所(よそ)へ行(ひ)っぱってゆかれてしまいますぞ。まだ大丈夫という病人の頭の下から枕を引っこぬいてゆきますぞ。此の黄色の奴めは信仰を編み上げもすりゃ引きちぎりもする。忌(いま)わしい奴を有りがたい男にもする。白癩病(びゃくらいや)みをも拝ませる、盗賊(どろぼう)にも地位や爵や膝や名誉を元老並(げんろうなみ)に与える。古後家(ふるごけ)を再縁させるのもこいつだ。やい、うぬ、罰当(ばちあた)りの土塊(つちくれ)め、どの人間をも魅惑(みわく)して、諸国の無頼漢(ごろつき)の争闘種(けんかだね)を蒔く淫売め……』(シェイクスピア『アゼンスのタイモン』〔坪内逍遙訳、『新修シェイクスピア全集』第33巻、中央公論社、130-132ページ])。