宮古島狩俣祖神祭の「にーり(三)」

具志堅 要

2023年09月24日 13:06


狩俣うやがむのにーり (三)

一、まづまらーが てまりやが やれこの
マヅマラーが、手勝り(機織り上手)が、やれこの人が

二、とえんぬぬ、よんたらい、たてばし
十五本の縦糸の布を、〔糸数を〕読み揃えて〔織機〕に立てて

三、みゆうとぬぬ、あまぎぬゝ、すでばし、
夫婦〔二反〕布を、一反に余る布を、織り上げた

四、ぴといおい、すかまおい、からだ、
一日の織りで、昼間の織りで仕上げたのだ

五、みゆうとぬぬ、あまぎぬぬ、おりやつみ、
夫婦〔二反〕布を、一反に余る布を、織り集め

六、おりやつみて、しらつみて、からや
織り集めて、仕上げ集めてからは

七、うぷぐふん、さとんなか、むちみやい、
大城御嶽に、里の中に持ち寄って

八、ふたいぎん、あまぎぎん、ぬやつみ、
二重の着物を、一重に余る着物を縫い集め

九、ぬやつみて、しらつみて、からや
縫い上げて、仕上げてからは

一〇、まんみうき、まふぎうき、みちから、
胸にかけて、首にかけてみたら、

一一、あてのかぎ、どきのかぎ、かりば、
あまりに美しかったので、とても美しかったので

一二、みやーくとなぎ、すまとなぎ、とよたれ、
宮古のあらん限り、〔狩俣の〕シマのあらん限り、名高くなった

一三、にしまがみ、しらすがみ、とよたれ、
〔楽土である〕根の島まで、楽園までもその名が轟いた

一四、うきながみ、うまいがみ、とよたれ、
沖縄までも、王の御前までもその名が鳴り響いた

一五、とよんとうり、みやーがいとうり、うらまち、
鳴り響き続き、誇らしくあり続けてください

一六、 すむずあーだ、すがまあーだ、まばから、
下地の百姓、洲鎌の百姓たちから

一七、ぴさらうーや、ぴさらとのとのや、
平良の親〔酋長〕、平良の殿たちが

一八、かうてがら、いれてがら、こゝろ、
買いたい、貰いたいというのなら応じても良いが

一九、かおかねーが、いえかねーが、まばから、
買うとも 貰うとも言わないので

二〇、ぴさらうーや、ぴさらとのとのや
平良の親〔酋長〕、平良の殿たちは

二一、むぬうわみや、むぬそねま、やりば
物を羨む、物を嫉(そね)む者たちだから

二二、ぬゝとらで、たまとらで、きたんも、
布を盗(と)ろうと、玉を盗ろうときたのだろう

二三、まやぬまーぶ、とよんまーぶこいや、
〔御嶽の〕前の家のマブコイは、名高いマブコイは

二四、ならぐとん、さすぐとん、あらだ、
自分のことでも、指名されたわけでもないのに

二五、ならぶばが、うやぶばが、つみやん、
自分のおば、尊いおばのために

二六、やらぱいで、やらとんで、みりば、
家から走り出し、家から跳び出して見ると

二七、んなばすぬ、ぱるばすぬ、うざむや、
原野の果ての、畑の端に住む百姓たちが

二八、いんのえーの、ふつんきやーの、みつきやど、
海の上に、向き合う海岸に満ちて

二九、いつんなり、からんなり、たちうりば、
威勢を上げて、力を漲らせて立っていたので

三〇、まやぬまーぶ、とよんまーぶこいや、
前の家のマブコイは、名高いマブコイは

三一、やゝぴとき、さとむとん、ぴやりみやい
家まで一息に、里元に走って戻り

三二、ならかたな、さすみづら、とりさし、
自分の刀、自分の佩刀を取って差し

三三、 うぷぐふん、さとんなか、ぴやりみやい、
大城御嶽に、里中に走って戻り

三四、ならかたな、さすみづら、ぬぎやぎ
自分の刀、佩刀を〔鞘から〕抜いて

三五、たうきやこーろ、ぴといこーろ、ころばし、
一人倒し、ひとり倒し転ばし

三六、まやぬまーぶ、とよむまーぶこいや
前の家のマブコイは、名高いマブコイは

三七、みやーくとなぎ、すまとなぎ、
宮古のあらん限り、シマのあらん限り、名高くなった

三八、うきながみ、うまいがみ、とよたれ、
沖縄までも、王の御前までもその名が鳴り響いた

三九、にしまがみ、しらすがみ、とよたれ
根の島まで、楽園までもその名が轟いた

四○、とよんとうり、みやーがいとうり、うらまち、
鳴り響き続き、誇らしくあり続けてください

稲村賢敷『宮古島旧記並史歌集解』(1962年、琉球文教図書)より
現代語訳 具志堅 要

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