近代以前の娼婦と近代以後の娼婦

近代以前の娼婦と近代以後の娼婦
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《エル(彼女たち)/体を洗う女-身繕い》(リトグラフ)1896年、ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

ロートレックは吉原の日常生活を描いた歌麿の《青楼十二時》を見て、
娼婦たちの日常生活を描いた《エル(彼女たち)》という画集を出版したとのこと。
浮世絵の時代、娼婦たちは歌舞伎役者、相撲取りと並ぶアイドルだった。
まだ19世紀西欧のポルノグラフィックな性産業の視点に侵されることなかった。
ロートレックは近代以前と近代以後を結ぶために、
娼婦たちの日常生活を描いた。
それはポルノグラフィックなものではなく、
近代が生み出した人間の悲哀が描かれ、
そして彼女たちが単なる商品ではなく、
尊厳をもった人間であることを描いたのだ。

近代以前の娼婦と近代以後の娼婦
喜多川歌麿画《青楼十二時 続/巳ノ刻》1794年、シカゴ美術館蔵



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