
河鍋暁斎画《老いた小野小町》明治時代、大英博物館蔵
暁斎描く老婆は小野小町のようだ。
絶世の美女だったとされる小町は、百人一首では老いを嘆く歌を詠んでいる。
けれど暁斎の描く小町には、老いを嘆く表情はうかがえない。
流れゆく歳月を楽しんでいるのだ。
この絵は、おそらく北斎の描く小町の、後日の姿になるのだろう。
北斎の描く小町は、時の移り変わりを
少しの驚きをもって受け入れている。
その驚きは後悔ではなく、
出会う人々の穏やかで満ち足りた表情の中で、
ほんの少しの驚きで、そのまま穏やかな風景に溶け込んでいくのだ。

葛飾北斎画《百人一首うばがゑとき 小野小町》1835-36年頃、大英博物館蔵
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に