
葛飾北斎画《『絵本隅田川 両岸一覧』より「元柳橋の子規」》1804年頃、シカゴ美術館蔵
この絵本を見ていて気になるモヤモヤが一つある。
橋のたもとにいるこの乞食坊主の姿だ。
由来がわからない。
彼の姿を気に留めている様子の者はいない。
みんな子規(ほととぎす)の音色に聞き惚れているようだ。
彼自身もそうかも。
子規の鳴き声に耳を澄ませているのかも。
乞食のようでもあるし、
悟りをひらいた坊さんのようでもあるし、
化物のようでもあるし、
橋にはそんな置物が必要だったのかもしれない。
お布施を差し上げることによって、
橋という現世(うつしよ)の異界を渡ることができたのだ。