
ピーテル・ブリューゲル(父)《嬰児虐殺》1565−67年年頃、イギリス王室コレクション
新約聖書の嬰児虐殺のシーンを描いたブリューゲル。
作品が描かれた頃の1566年には、
ネーデルラントのカルヴァン派による聖像破壊運動があった。
それに対し、ネーデルラントを支配していたスペイン国王フェリペ2世は
1567年に1万人の部隊を派遣し、
カルヴァン派を中心とするプロテスタントを弾圧していった。
ブリューゲルはそのリアルを描いた。
この絵は何者かによって書き替えられている。
虐殺される幼児の姿はなく、アヒルや壺などが描かれている。
そのわざとらしさが逆に悲劇を物語る。
戦争をしたがる者たちの白々しい嘘と同じように。