市場を描いた画家、ブーケラール

ヨアヒム・ブーケラール(1530-1574)はアントウェルペン(ベルギー)で生まれ、同地で亡くなっている。
昨日アップしたピーテル・アールツェンの甥であり、
フランドルの画家としては、ピーテル・ブリューゲル(父 1525-1569)とほとんど同世代にあたる。

アールツェンは静物画がジャンルとして確立するための重要な一段階を画したとされるが、
甥であるブーケラールはその延長上で、市場や台所の絵を数多く描いた。

フランドルを含むネーデルラントには、1566年にカルヴァン派による聖像破壊運動が吹き荒れた。
ブーケラールが活躍していたアントウェルペンはカルヴァン派が支配する都市で、1566年の教会の聖像破壊運動は、「静かに」「平静に」行われたとされる。

市場を描いた画家、ブーケラール
ヨアヒム・ブーケラール作 《四大元素:土、背景にエジプトへの逃避のある果物と野菜の市場》1569年、 ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

宗教的なテーマは左側の遠景に小さく描かれている。
そのような工夫を凝らすことによって、聖像破壊運動の対象から免れることができたのかもしれない。
そして絵は、宗教的なテーマから豊かな日常生活を描くことへと、大きく方向を変えていく。



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