自由な恋が封じられる親決め婚

ならんどぅりいちゃと 親ぬ酒かみてぃ
 我んや夫むちゃが なくしたてぃてぃ

ならんどぅりいちゃと うやぬさきかみてぃ わんやうとぅむちゃが なくしたてぃてぃ

【嫌だと言っているのに、〔勝手に〕親が〔結納の〕盃を交わして、私は夫持ち(既婚者)であると難癖(悪い噂)を立てられている】
 
おそらく父親が勝手に結婚相手を決めてしまったのだろう。
近代以前の沖縄の民衆層では、両家の親同士が盃を交わすことが結納にあたった。
本来、当人たちが結婚相手を決め、親はそれを事後承諾するのが普通だった。
それが近代になって激変する。当人の意思を無視して配偶者を決定するようになるのだ。
結納の酒盛りによって女性は既婚者の扱いになる。
女性にとっては言いがかり(難癖)のようなものだ。
若者仲間は彼女から遠ざかり、自由な恋が封じられる。
明治民法によって沖縄でも家父長制が確立されていく。
配偶者選択の自己決定権が失われることにより、
家制度が確立されていく。

出典:酒井正子「ウタと共に生きる:沖縄・本部半島の音楽文化(2)」湘南国際女子短期大学紀要第 6巻(1999年)


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