記録証文を持たない平の日本人の過去:柳田民俗学の視座

柳田國男は自分の学問の視座を「記録証文を持たない平の日本人の過去」に据える。
これは沖縄にも当てはまる。
「記録証文を持たない平のウチナーンチュ」の過去と現在の姿が、ボクたちが緊急に求めなければならないものだ。
六十年前に見た風景や生活、文化が音を立てて変化しようとしている。
1927年に柳田が感じたことと、2025年のボクたちは、同じ地平に立っているのだ。

自分なども実は一個の歴史家のつもりでいるのだが、主として学びたいと思う点が、記録証文を持たない平の日本人の過去にあるがゆえに、こうして彼等の取り伝えている昔の物、ことにその中でも複雑にして特徴の多い説話の類を、粗末にする気にはなれぬのである。
『柳田國男全集11』1990年、ちくま文庫、141ページ



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