ハブリエル・メツー作《病気の子ども》1660-65年、オランダ。
歴史家のフィリップ・アリエスによると、
17世紀西欧のブルジョワ家庭で家族意識が確立し、〈子ども〉が誕生することになる。
メツーの描く子どもには、身分や財産をあらわすものは描かれていない。
子どもである子どもが描かれているだけだ。
現代のように、子どもが子どもに見えることは、あたりまえのことではなかった。
ブルジョワジーという、コミュニティからの分離を目指した階級の中で、
子どもという存在は誕生するのだ。
病気の子どもを抱いているのは、おそらく乳母だろう。
ブルジョワジーの女性が自分の子どもを育てるようになるには、
ジャン=ジャック・ルソーの『エミール』(1762年)まで待たなければならなかった。