仲宗根幸市著『琉球列島 島うた紀行 第一集』から、今帰仁村越地(こえち)のミャークニーを読む。
越地区の住民登録人口は、149世帯、382人(平成29年12月31日現在)。

今帰仁村集落(字)区域図(今帰仁村役場)
歌の1行目はテキストからの転記(読みやすいように区切りごとに一マスあける)。
2行目はテキストのフリガナにもとづく音表記。
3行目はテキストの訳を転記。
4行目は具志堅要による私訳。
越地川ぬ水や 砂かみてぃ湧ちゅさ
越地みやらびぬ くんだ美らさ
ふいじがーぬみじや しなかみてぃわちゅさ ふいじみやらびぬ くんだちゅらさ
越地川の水は砂の下からこんこんと湧いている。越地の娘さんの足のきれいなことよ。
越地村の泉の水は砂を載せて湧いているよ。越地の娘たちのふくらはぎの美しいことよ。
山と山ちなじ 見晴らしんゆたさ
昔北山ぬ 名残立ちゅさ
やまとやまちなじ みはらしんゆたさ むかしふくじゃんぬ なぐりたちゅさ
山と山をつないで眺めもすばらしい。昔の北山時代の名残が立ちますよ。
山と山を繋いで、見晴らしも壮快だ。昔の北山の名残が立つよ。
今帰仁ぬ一条 並松ぬ美らさ
花染ぬ芭蕉布に みらび美らさ
なちじんぬちゅなぎ なんまちぬちゅらさ はなじゅみぬばさに みやらびちゅらさ
今帰仁の一条の松並木はたいへん美しい。花染めの芭蕉布姿の娘さんも美しい。
今帰仁の街道沿いの松並木の美しさよ。花染めの芭蕉布を着けた娘たちの美しさよ
〔仲原〕馬場の松並木は、天然記念物に指定されている。大正の初年まで、少年たちは東の端の松に登って西のはしまで猿のように枝渡りをした。大正の末頃にも九十九本の松があった。馬場の中央、南側から北側に、べんとうをさげたと伝えられるビントウ松がはうようにして伸びていた。(『今帰仁村史』)
くぬ年になてぃん 肝やなま若さ
いちゃし忘りゆが 元ぬ十八
くぬとぅしになてぃん ちむやなまわかさ いちゃしわしりゆが むとぅぬじゅはち
この年になっても、心はまだ若い。どのようにして忘れようか、元の十八時代を…。
この歳になっても気持ちはまだ若い。どうしたら忘れることができるだろうか、昔の十八歳の頃を
肝内や泣ちょてぃ 顔付や笑てぃ
昔さる哀り なまや忘てぃ
ちむうちやなちょてぃ かうちちやわらてぃ むかしさるあわり なまやわしてぃ
心では泣いて、顔は笑っているが…。昔経験した哀れの数々を、いまは忘れてしまって…。
心で泣いていても顔は笑顔だよ。昔した苦労は〔あまりに多すぎて〕、今は忘れてしまった〔ような気がするよ」。