——無縁の縁(えにし)を紡ぐ——
ドービニの庭の前面には緑と赤の草が生えている。左側に緑の茂みとリラがあり、切株から出た葉が白味がかっている。中央の地面にばらの花壇があり、右側には柵と壁、壁の上に紫色の葉の榛(はしばみ)の木がある。
それからリラの垣根と黄色い丸味のある菩提樹(ぼだいじゅ)の列があって、奥の突当りの家は紅で、屋根の瓦は青味がかっている。
長い腰掛けが一台に椅子が三つ、黄色い帽子をかぶった黒い人影と、前面に黒猫がいる。空は薄緑。(硲伊之助訳『ゴッホの手紙 下』1970年、岩波文庫)