自然の中の女性像:ゴッホ

テオ宛第645信の手紙でゴッホは「淡い緑と黄緑とで桃色の補色になる」と指摘した。
それに続けて、ゴッホは自然の中の人物像(女性像)の描きかたについて述べる。
引用文中のピュヴィスというのはピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)のことだと思われる。

もしもだれかがそれを感じ取れたら、それだけで大したことだ。すなわち次のような利益をもたらせる、化粧にも明るくて美しい色の調和が得られ、例えば通りがかりの人の肖像を描かせてもらえるなら、過去のいかなる時代よりも綺麗なものになるだろうし、それに現在でも自然の中には自然と芸術との間にピュヴィスの画布の美しさが介在する。それで昨日は二人の人に出会った。母親は濃い洋紅色のドレスを着、娘は薄桃色に着飾って、なんの飾りもない黄色い帽子をかぷり、田舎風のとても健康的な人物、大気に晒され、陽に焦げている。母親は特に真赤な顔をして、髪は黒く、耳にはダイヤモンドを二つ嵌めていた。それでまたもドラクロアの《聖母教育》の絵を思い出した。


自然の中の女性像:ゴッホ
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ『海辺の少女たち』1879年(オルセー美術館)

自然の中の女性像:ゴッホ
ゴッホ『小麦畑に座る麦わら帽の若い農婦』1890年.6月 (個人蔵)

自然の中の女性像:ゴッホ
ゴッホ『小麦畑を背景に立つ若い女性』 1890年6月(ワシントン、ナショナル・ギャラリー)

自然の中の女性像:ゴッホ
ゴッホ『畑を横切る2人の女性』1890年7月 (マクネイ美術館)

自然の中の女性像:ゴッホ
ドラクロワ『聖母の教育』1852年(国立西洋美術館)



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