ゴッホ『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の三幅対

サン・レミからパリのテオに宛てたゴッホの手紙(第592信、1890年5月25日)には、
『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の構想が書かれている。

《揺籃》について君が言ったことはうれしい、たしかに彩色石版を買い、感傷的になって手廻しオルガンを聞いている庶民の連中は、それとは知らずに真実に接している、おそらくサロンを見に行くブルヴァールの常連よりは誠実だと言えよう。
ゴーガンが望むなら《揺籃》の中で、まだ枠に張っていない方のをやっておくれ、ベルナールにも友情の印として一点やりたい。もしゴーガンが《ひまわり》を欲しがっているなら、交換に君の気に入った絵をよこすべきだ。
ゴーガンも大分遅れて、長い間見つめた上で《ひまわり》が好きになったのだろう。
もし《揺籃》を中央に、《ひまわり》二点を両側に並べたら三幅対になる。
そうすれば、頭部の黄とオレンジ色は、隣の黄色の鎧戸(よろいど)でもっと明るく映えるだろう。(硲伊之助訳『ゴッホの手紙 下』1970年、岩波文庫)


手廻しオルガンというのは庶民相手の辻音楽師の演奏する楽器だ。ゴッホはそこに真実と誠実を見ている。
『揺籠』はゴッホは6枚描いている。
『ひまわり』もそれくらい描いている。
同じ主題の絵を複数描き、それらを組み合わせることをゴッホは夢想していた。

ゴッホ『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の三幅対
ゴッホ『揺籠』1889年2月(ボストン美術館)

ゴッホ『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の三幅対
ゴッホ『ひまわり』1889年1月(ファン・ゴッホ美術館)

ゴッホ『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の三幅対
ゴッホ『ひまわり』1888年8月(ノイエ・ピナコテーク)

ゴッホ『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の三幅対

ゴッホ『揺籠をゆらす女と二枚のひまわり』の三幅対



同じカテゴリー(ゴッホ)の記事