——無縁の縁(えにし)を紡ぐ——
《揺籃》について君が言ったことはうれしい、たしかに彩色石版を買い、感傷的になって手廻しオルガンを聞いている庶民の連中は、それとは知らずに真実に接している、おそらくサロンを見に行くブルヴァールの常連よりは誠実だと言えよう。
ゴーガンが望むなら《揺籃》の中で、まだ枠に張っていない方のをやっておくれ、ベルナールにも友情の印として一点やりたい。もしゴーガンが《ひまわり》を欲しがっているなら、交換に君の気に入った絵をよこすべきだ。
ゴーガンも大分遅れて、長い間見つめた上で《ひまわり》が好きになったのだろう。
もし《揺籃》を中央に、《ひまわり》二点を両側に並べたら三幅対になる。
そうすれば、頭部の黄とオレンジ色は、隣の黄色の鎧戸(よろいど)でもっと明るく映えるだろう。(硲伊之助訳『ゴッホの手紙 下』1970年、岩波文庫)